うわごう径を行く〜茶平集落〜
安達 - 2013-03-03 21:43

ブログランキング・にほんブログ村へ

うわごう径を行く。第2回は浦山渓谷東側、蛇の絵が描かれたトンネルを抜けてすぐの急勾配を登った先にある茶平集落を訪れました。
歩くだけに難渋するその坂道は冬場アイスバーンとなっており、車でのぼるのは大きな危険が伴います。雪道から先は車を降りて歩くのですが、初めて訪れたときは一体どこに集落があるのか不安に呵まれ、道を辿り果てたその先に踏み込んで初めてぽつり、ぽつりと寄り添う形の廃村が姿を現したのです。

 

茶平集落は西側と東側に分かれていますが、私が訪れたのは西側廃屋。軒先にこうして野菜を干すための竹が吊してあります。
ここには他の集落ではあまり見られない、貴重なものを目にすることができるのですが、比較的新しい集落ということもあり、公開して良いものか躊躇するところです。

 


日南山峯、でしょうか? 調べましたがそんな画家いません。

 


くしゃくしゃになったまま残骸の下に押しつぶされて土に帰るのを待っていた古い古い写真の皺を伸ばして俯瞰すると、褪せた記憶の底に沈殿した昭和の甘い期待に充ちた想い出が撹拌され、濁ったまま蘇るという類の錯覚に心躍ります。誰かしらない他人の想い出でも、しばしば自分の歴史さえ輪郭をうしない、鮮やかさをうしない、澱のように沈んでしまうものですが、瞼や脳裏に焼きつけた褪せた時代は、外部記憶によって鮮やかに蘇ることがあります。
残された僅かな写真はメモ帳に挟んでおきました。

 


一見するとコンパクトなメモ帳なのですが、中身は浅岡ルリ子似のエログラビアでした。

 


エログラビアの他には、春歌・かえ歌の歌詞がついていました。会津磐梯山はセーフですが、磯歌なんかは作詞家が長生きだったので掲載できませんね。
会津磐梯山は盆踊りくらいでしか耳にしませんが、もともとアップテンポな曲で、若い男女が踊り狂うものだったようです。そもそもお祭りというものが若い男女の出会いの場だったわけで、この民謡に春歌があっても不思議ではありません。

 


白衣のようですが…。
残されているノートや書籍等から、看護学校に通っている看護婦さんがいたようです。分厚いノートを開いた頁にたまたま「男の生殖器」という項目があり、「でない」と書かれていました。試験に出ないってことでしょう。

 


子供部屋に残された旅のおみやげ。
他にはカレンダーくらいしか残されていませんが、こういう飾り方をするのはきっと女の子です。

 


部屋の照明はすでに生産されていない白熱球です。この家は外観以上に、内部の崩壊が進んでいました。

 


集落斜面の上の方にある廃屋。
風雨にさらされ、いろんなものがぶら下がっていました。

 

どなたかCanonユーザの方、キャップ落としてますよ。初回訪問時にはなかったので、ここ1年以内のものです。廃墟を訪れる際は、持ち帰らない、残さない、に心配りが必要です。

 


消防士に授与される三等勤続章です。これは大切な物ではないのかな?
箱に戻してしまっておきました。

 


ブルーチップという集めてシートに貼って、カタログ商品と交換できるものです。ブルーチップではありませんが、私の地元のスーパーにも似たような物がありました。集められるわけ無いのに、やたら枚数を要求される商品なんかを眺めたりして、夢がありましたね。

 


四方が完全にクローズされた家が一軒だけあります。このへんの廃屋はみんな同じ名字の一族が住んでいたようですが、ここが一番新しい廃屋です。

 


直通電話機。集落内を結んで連絡用にしていたようです。すぐ近所なのに電話代つかって連絡するのはもったいないけれど、この急斜面を上り下りするのもしんどいのでしょうか。

 


茶平はうわごう沿い集落のなかでも、残された文書文献の豊富なところでもあります。
刮がれた時間が残骸に沈み、そのままそうしていれば誰の目にも触れずにすべて無かったことになるはずだった生活の上辺が、こんなふうに誰かの手によってふと回顧され、じぶんとはなんの所縁もつながりもないそのコミュニティに懐古を覚え、もっとも手っ取り早いタイムスリップあるいはタイムリープを完成させる手助けになるのではないかと、アーカイブに着目するのはそのような理由があります。それがなにかの救済になるとはおもいませんが、途切れるはずだっただれかの記憶がまたつながっていけば、そのつながりが巡り巡ってやがてじぶん自身に戻ってくるのではないかという淡い期待を抱くことができるのです。

ブログランキング・にほんブログ村へ
SERIES TOPICS - うわごう径を行く
安達 - 2013-03-08 01:55
大神楽、武士平を後にして、小持山、大持山の向こう側、シリーズ終着点、白岩集落へ至ります。
車で行くには秩父方面からではなく、飯能方面から名栗湖へ向かう70号をひた走り、すれ違うことさえ困難な細い道の終端にある鉱山施設JFEミネラル武蔵野鉱業所に至ります。
白岩集落は最近まで人が住んでいたようで、保存状態の良さも含めてうわごう沿い集落の中でもっとも美しい廃村です。
安達 - 2013-03-06 00:19
茶平を後にして有坂を通過すると、たわの尾根に至る前に武士平集落と大神楽集落に立ち寄ることができます。アクセスの悪い有坂を避けたのですが、事前情報と異なり、これらは生きた集落でした。
みつけられた廃屋は武士平で二軒、大神楽で二軒のみ。それだけでも十分な宝の山です。
安達 - 2013-02-28 01:42
秩父浦山渓谷は白岩を起点として武甲南西の山を越え、大神楽、武士平に至り、茶平、巣郷、有坂、嶽、日向集落に通じる険しい山道のことを「うわごう径」といいます。
かつてPS2のホラーゲームSirenの参考にされた高度過疎集落群でもあり、住人の姿は絶えていますが、今回はこのうわごう径沿いの集落群を、白岩ではなく日向から逆に辿ります。
サイトマップXML自動生成ツール
The Wallpaper Journal All rights reserved.